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押し入れの冒険−5

 そんなわけで、ボクらはその後無事、元の世界へ帰ってくることができました。
 愛の天使は胡散臭かったけども、どうやらあれは夢やないようでした。
 ボクの願いは叶ったし、冬獅郎のお願いも、叶うんやろなと思います。
 ボクはそれが幸せで幸せで、蕩けてしまいそうな顔をどうにもできんと、イヅルに変な顔で見られました。
 ボクの可愛え冬獅郎は、その後ボクが何を願ったのかちょっと気にしていたようですけども、聞かれたって答えません。
 もちろんボクも、聞きません。
 聞く必要なんて、ありませんから。
 この願いのポイントは、自分の願いを相手に聞かれへんゆうことです。
 何を願ったか相手にはわからないから、聞かれたくないような願いでも、何でも言える。
 相手が何を願うか。
 そないなこと、ほんまは何も関係あらしません。
 そら冬獅郎は、ボクの願いが何か、一生懸命考えたはずです。
 一生懸命考えて、ボクが願ったことに対して、何か策を立てようとしたはずです。
 ボクの願いがどんな種類のものなのか、それまでのやりとりで、およそ見当はついているわけですから。
 せやけど、ボクが何を願っても困らないような願いをたったひとつに集約させることなん、できますやろか?
 打ち消し合うたら、やり直しです。
 そないなことより、自分のほんまの願いをひとつ言うといた方が、なんぼかマシかわかりません。
 それこそ、雛森ちゃん一生守りたいとか、将来的に身長がボクより高うなるとか、普通の願い言うといた方が、絶対ええに決まってます。
 冬獅郎だって、最後にはそう思ったはずです。
 いや、そうやなくても、構わへんのです。
 あくまでボクの願いを全否定できること願うとっても、構わへんのです。
 ボクとは全く関係のないことを願うとっても、構わへんのです。
 とにかくボクは、冬獅郎の願いが、知りたかったんです。
 誰にも聞かれへん願いがひとつだけ叶うとしたら、あの子は何を願うんやろう。
 ボクの願いは、それやった。
 冬獅郎が何を願ったのか、知りたい。
 そしてボクの願いは、叶いました。
 願いを叶えると言われ、愛の天使の光に包まれた瞬間、あの子の可愛え可愛え声が聞こえたのです。
 

 市丸が、他の子を好きになったりしませんように。


 ああもう、なんて可愛え子ぉやろね!
 もう辛抱たまらへんわ!
 それがキミのほんまの願いやってんね?
 キミの心配ポイントはそこやってんね?
 ボクがほんまにキミひとり好きやったら、ボクが何願っても構わへんねんな?!
 そんなん、わざわざ願わんかて叶うに決まっとるのに、なんて可愛えお願いなんやろ!
 キミ以外の誰かなん、未来永劫、一瞬やって、見るかいな!
 おかげで前以上にキミにメロメロや。
 ハート直撃や。
 骨抜きや。
 もう我慢せえへんで。
 キミの気持ちがわかったからには、今度こそ、逃がさへん。
 ほんまの恋人同士に、なろな?
 死が二人を分かつとも、永遠に愛し合う恋人同士になろな?
 今夜キミの部屋行くよって。
 待っとりいや、冬獅郎!





 そうしてボクは、可愛え可愛え可愛え可愛え恋人を、こうして手に入れたのでした。

 ああ、幸せや〜vv



終わった…