.

Don't Speak−6

 熱くて柔らかいものが唇に押し当てられるのを感じて、日番谷は心地よい眠りから、急速に目覚めた。
「…う?」
「あら、おはよう、十番隊長さん。こないなところで眠らはってたら、風邪ひくで?」
「い、市丸っ、お、お前、今、なに…」
「王子様の目覚めのキスや。お次はおはようのキスやで。ほら、目ェ閉じ?」
「だ、誰が王子様だ、バカッ!どけよお前!勝手に人の唇奪いやがって!」
 疲れて眠っていたとはいえ、市丸が近付いてきたことに、全く気付かなかった。
 それどころか、完全に覆い被さられて、既にかなりピンチな状況になっている。
 一気に心臓が、破裂しそうなほどバクバクしてきた。
「嫌言うたら、どないする?このままキミをボクのもんにする言うたら?」
「な、なんで、そんな…だって、それは、剣の稽古でお前が勝ったらって…」
 本気で欲しいわけではないから、勝負をつけないのだと思っていた。
 その気があるなら、勝つチャンスだって、今まで何回かあったのに。
 いや、それはともかく、こんなところですんなりいただかれてしまったらたまらない。
 びっくりして日番谷が言うが、市丸は平然とした顔をしてしゃあしゃあと、
「それはキミの思い込みや。剣で勝ったら、そらお願いきいてもらうけども、剣の勝負で勝つまで、チャンスがあっても我慢するいう意味やないで?」
「な…、テメエ!」
 まるで詐欺みたいな話だ。
 考えてみればそれもそうかもしれないが、積極的に勝とうという様子がなかったので、その気はないのだと思っていた。
 つまりは遊びを仕掛けてきても、本当に奪うつもりはないだろうと日番谷を油断させて、襲ってくるなんて。
 頭にきて日番谷が怒鳴ると、市丸は何故かますます嬉しそうな顔をして、
「なんや〜、そないその日を楽しみにしてくれとったん?可愛えな〜。やったらキミのために、初めての夜は最高にロマンチックな演出したるよ?お布団に花びら敷き詰めて、ええ雰囲気の灯りつけて、ええ匂いのお香たいて、おいしいお酒も用意して」
「なんでそんな話になるんだ!楽しみになんかしてねえし、そんな夜なんか一生こねえし、気色悪いこと考えンな〜!」
「そうなん?やったらやっぱり、今もらってまおう♪」
 勝手に決めて、市丸の手が、するりと着物の合わせ目にもぐり込もうとしてきた。
「ヤメロ!」
 手や肩を触られるくらいのスキンシップにも慣れていないのに、胸など他人に触られたこともない。
 触れられた瞬間、全身が沸騰するほど熱くなった。
「ボクにヤらしいこと、されたない?気持ちよ〜くなって、疲れも吹き飛ぶで?」
「あっ」
 市丸の指先が敏感なところに触れた瞬間、驚くほどの快感が全身に走った。
「優しくするから、大丈夫や。ほら、力抜いて、可愛え乳首、ボクに見せてごらん?」
「や、やめろ、やめろ、」
 まさか、こんないきなり、本気で手を出してくるとは思わなかった。
 早く新しい遊びを思いつけとは思ったが、こんな進展は、あまりにも予想外だ。
 暴れても大きな身体はものともせず、着物が肩から落とされて、胸を露にされてしまう。
「あ、可愛え〜。ピンク色や〜。興奮するわ〜」
「アホか、変態、ちょっと、やめろって…、あっ」
 ちゅっと吸われて、背中をゾクゾクしたものが走った。
(ウソ、なんでそんなトコ吸うの?ああ、ウソ、信じらんねえ、気持ちイイ…)
 頭がクラクラするほどの快感に動揺して、日番谷は必死で市丸の頭を殴った。
「あ、やめろ、もう、バカ、変態…!」
「気持ちええんやね?ほんま可愛えよ、日番谷はん?」
 背筋を蕩かすような声で言って、もう片方の乳首も摘んでくる。
「あっ、…んんぅ…や、…め、…」
 変な声が出てしまい、必死で口を手で押さえた。
 それでも好奇心に負けてチラッと目を開けて見下ろすと、市丸の赤い舌と細くて長い指先が、自分の小さな左右の乳首をなぶっているのが見えて、腰の奥が、ずーんと重く熱くなる。
(ウワ、わけわかんね…なんか、エ、エロすぎ…)
 これが大人の世界なのだろうか。
 刺激が強すぎて、もうそれだけでじっとしていられないくらい、股間が熱く脈打ち始めた。
「…クソ、死ね、バカ、…市丸、ヤメロ…」
 ぎゅっと髪を掴んでひっぱると、市丸はチラッと顔を上げ、直接股間にクるような声で、
「ええ子にしとき?」
「ひゃっ!」
 熱の集まった股間を、長い指先で、すっと撫でられた。
 これは、とんでもない衝撃だった。
「な、何しやがるっ!やめろっ、触ンなっ、アッ!」
 耐えられないほどの刺激に、無我夢中で市丸の手を掴み、なんとか逃れようと暴れた時、
「あぁ、あかん。ええところやのに、面倒なお人が来よった」
「えっ?」
 忌々しそうな市丸の声とほぼ同時に、
「日番谷隊長!」
「うあっ?!、うき、竹っ?!」
 その姿を見て一気に正気に返り、日番谷は顔中に血が上るのを感じた。