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ちっちゃな店長さん−8

「勝手にストリップなん、するかいな。キミらが万引き犯や言うから、疑い晴らすためにしたんや。そうやろう?」
「それは…」
「ボクは違うて何度も言うたよ。脱がなあかんところまで、キミらが追い詰めたんや。人にさせといて、自分はできへん言うん?ずいぶんとまあ、勝手やね」
 要求そのものはメチャクチャだが、ギンの名誉を傷付けたことは本当で、金で解決はさせないと予め言われているだけに、他にどう責任をとっていいのかとっさに思いつかず、言葉が出ない。
「ボクは許さへんよ」
 すぐに続けて、きっぱりとギンが言い放った。
「責任とってくれはるんやろう?…早う、脱ぎ?」
「…俺は、…上着を脱げと言っただけで…」
「皆の前で万引き犯や言われた時のボクの気持ち、わかる?」
 じわじわと、追い詰められてゆくのがわかった。
「濡れ衣やのに、恥ずかしゅうて、死んでまいたかったよ?」
 まるで、蛇だ、と日番谷は思った。
「それに比べて、キミは、ええね?ボクの前でだけ、ちょうっとだけ恥ずかしい思いすればええだけなんやから。それとも、店に出て、みんなの前でしてくれる?…ボクがされたみたいに」
「わかったよ!」
 ネチネチといやらしく言ってくるギンに、とうとうキレて、日番谷は叫んでいた。
 言ってからしまったと思ったが、すかさずギンはドアに走り寄り、カチリと鍵をかけて日番谷を振り返る。
「約束や。ボクの前でだけ、見せてくれはったら、それでええから。他の子は誰も、入らせへん。安心して、脱ぎ?」
 そんなことを言われても安心でもなんでもなかったが、もはや引き返せない。
 それに、日番谷のサイズに合う制服などないため、一番小さいサイズの制服の袖を折って着ているため裾も長く、ズボンを脱いだところで脚を見られるくらいだ。
 裸にTシャツ一枚とかパジャマの上だけとか、女性のそういう姿に興奮する男がいることは知っていたから、こんなコンビニの制服でも、つまりはそういう姿を見たいのだと思った。
(…ちくしょう、変態め)
 こんな男のいいなりになるなど、眩暈がするほど屈辱的だったが、濡れ衣を着せたことが同じ屈辱だったと言われたら、返す言葉もない。
 嫌なことは早く済ませてしまえとばかりに、思い切ってズボンのボタンをはずし、すとんと落とした。
「これで、満足かよ!」
 脱いだズボンを椅子に放ると、ギンはにこにこしたまま、首を横に振った。
「制服一枚がええ言うたよ。…下着も、脱いでや?」
「変態め…!」
 今度は口にも出して、思わず日番谷は吐き捨てた。


 日番谷の真っ白い素足が目に眩しくて、ギンは思わずゴクリと唾を飲んだ。
 嫌そうにしながらも、とうとう観念したように下着も脱いだ日番谷は、コンビニの制服をちょっとめくってやれば、無防備な可愛いあそこが見えてしまうのだと思ったら、よけいに興奮して、早くも股間に熱が集まってくる。
 ギンはジーンズの前を開けたままだったが、日番谷はあえてそこからは目を逸らし、見ないようにしているようだった。
「そしたら、そこの机の上に座って」
「何っ?!」
 ギンが次の指示をすると、日番谷は驚いたように顔を上げた。
「まさか、それだけで済む思うとるんやないやろうね?」
 言ったとたんに真っ赤になる頬が、なんとも可愛らしい。
 この子はこんなに可愛いのに、今までこういう欲望にさらされたことがないのだろうかと、ギンの欲望にいちいち動揺する日番谷が不思議な気がした。
 初めてなのだとしたら…、それはそれで、嬉しい気がする。
 初めてならば、ギンが次に要求することも、きっとわからないに違いない。
 嫌々ながらも椅子を踏み台にし、言われたとおり机の上に可愛らしいお尻を乗せた日番谷に、ギンの口の両端が、ぐぐっと上に上がった。
「あんよも、上に乗せや?」
「えっ?」
「その可愛えあんよも、机の上に乗せるんよ?膝立ててな?」
「おまっ…」
 そうしたらどうなるのか、わかったらしい。
 みるみる真っ赤になる日番谷がどうしようもなく可愛くて、大人の男達の汚い欲望の世界を、つきつけてやりたくなってしまう。
 少しずつ、色んな方法で。
「いきなりは恥ずかしい?せやったら、容赦したってもええよ?」
 ギンは事務所に無造作に置いてあった男性向けのグラビア雑誌を手に取ると、パラパラとめくって、一枚を選んだ。
「目で見た方が、わかりやすいよね。そしたらこういうポーズ、とってくれる?」
 日番谷がまだ無垢なのだとしたら、段階を踏んでやるのもいい。
 ギンが選んだのは、斜め座りで少々前かがみになり、両手を両膝の横につく、特別いやらしくもない可愛らしいポーズだった。
 それならもちろん、両脚の間も見えない。
 日番谷はチッと舌打ちをするが、先にもっと嫌なポーズを口にしたためか、それなら許容範囲内だったらしく、諦めたように、大人しく同じポーズをとってくれた。
「か…可愛え〜〜〜〜vvvvv」
 まだ段階の第一歩なのだが、その姿のあまりの可愛らしさに、思わずギンは身を乗り出してしまった。
 日番谷は心底嫌そうに、喜ぶギンをバカにするような目で見てくる。
「店長さんは、ほんまに可愛えんやね!制服一枚ゆうんは、ほんま大正解や〜vvな、な、そしたらな、これ、胸に抱っこしてくれる?お膝はくっつけてな?」
 これまた事務所の椅子に置いてあったクッションを渡すと、またも日番谷は呆れたような顔をするが、素直に受け取って、可愛らしいその手で、きゅっと抱き締めた。
 両膝をくっつけてぺたんと座り、大きなクッションを抱いている日番谷は、これまた妖精のように可愛らしかった。
「なんて可愛らしいんやろう、店長さんはvv可愛えお膝が、またたまらへんvvまるで、コンビニの妖精みたいや〜vv」
「…なんじゃ、そりゃ」
 その言い方は、九割がた呆れているが、…残りの一割は、照れているように見えた。
 ギンの要求のいやらし度が下がったので、ホッとしたのかもしれない。
「次はまた横座りして、クッションそこに置いてその上にお顔つけるように抱っこしながら、腰をひねって横になって、お目々こっちに向けてv」
 またグラビアを見せながら言うと、日番谷は大人しくクッションを置いて、その上に上体を倒した。
「上のあんよは曲げて後ろにして、下のあんよはちょっと前出して、机の上からちょうっと外に浮くようにするんやで?」
 細かい注文をつけると日番谷の眉が寄ったが、すぐにグラビア通りの、キュートなポーズになった。
「…とってもええよ、可愛えよ、店長さん。…そのまま、ボクの目ぇ、見て…?」
 奮いつきたくなるのを懸命にこらえながら、ギンは後半真面目な声で、静かに熱っぽく囁いた。