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ハートライン−3

  こんな夜着など、簡単に脱げる。
 ぱっぱと脱ぐと、直接素肌に当たる布団の感触に、なんだか妙な気分になった。
「…脱いだぞ。これで満足か」
『…ほんまに全部脱いだ?なんも、ひとつも、身につけてへん?』
「つけてねえよ。しつこいな」
 乱暴に言うと、市丸はようやく満足そうな、少し気持ちの高ぶったような息をもらした。
『ほんまに一人やってんな。よかったわ。疑ってもうて、ゴメンな?離れとると、なんや色々心配になるんよ。冬獅郎は可愛えし、狙うとる奴ぎょうさんおるし、気ィ抜けへん』
 お前だって、どうだか怪しいじゃねえか。
 今一人なのかとか。他の誰かにも、同じようなことを言っているではないかとか。
 言ってやりたかったが、心配になるほど市丸を好きだと思われたら喜ばせるだけなので、日番谷は言わなかった。
 それに、隊長業務と日番谷に費やしている時間と労力を計算すると、他に回す余裕がそれほどあるようにも思えない。
「お前みてえな物好きな奴、他にいねえよ」
『ほんまにそう思うてるんやったら、油断したらあかんよ。男はみんな狼やて、何度言わせたらわかるん?』
「ああもう、わかった、わかった」
 自分がその狼の代表のくせに、よく言う。
 こんな話をしていても仕方がないので、面倒くさそうに言うと、
『…まあ、ええわ。キミが二股なん、かけられへん性格なんは、信用しとるし。…せやったら、仰向けになって、大きくあんよ開いてみよか?』
「は?」
 前半はともかく、後半部分の意味がよくわからなくて思わず聞き返すと、
『冬獅郎はほんま、焦らすの得意やね。可愛えお顔で、ほんま小悪魔や』
 背筋がゾクゾクするような色っぽい声で、市丸はタメ息をつくように言った。
「別に、焦らすとかそういう…」
『せやったら、ええやろ?…お布団の中で、膝を立てて、大きくあんよ開き?』
「お、お前、何考えてるんだよ、ひ、開いてどうすんだよ?!」
『今冬獅郎がボクと話しながらあんよ開いとると思うと、任務頑張る元気がもりもりわいてくるんや』
(えええええぇぇ???ナニソレ??)
 市丸といると、一日一回はナニソレと思っているような気がする。
「い、市丸…お前、何か変なもの食ってねぇ?」
『冬獅郎は、悪い子やね。こういう時だけ、何も知らん子供のフリするんやね?』
「よく意味が…」
『意味なん、ええやん。誰も見てへんから、恥ずかしないやろ?お布団の中で、開くだけや』
(…な、なんか、変なプレイに入ってる…?)
 タラリと、汗が流れる。
 @怒って通信を切るA無視して話題を変えるB冷静に市丸の変態ぶりを指摘する…などと動揺しながら必死で対処法を考えていると、
『…冬獅郎は、もうボクのこと、嫌いになったん?』
 突然悲しそうな声で、市丸が言った。
『こないなこと言うボクなん、嫌い?このまま現世で死んでまった方がせいせいする?』
「ああ、もう、うるせえな!開いた、開いた!で、なんだって?現世のお前の任務ってどんなんだよ!」
 よく考えたら、どうせ見えていないのだから、適当に答えておけばいいのだ。日番谷が勢いよく答えると、
『…ほんまに開いとる?角度何度くらい開いとる?』
 何が角度だ、知るか、と思いながらも、
「う〜ん、90度くらい?」
 また適当に答えると、
『…冬獅郎は身体柔らかいから、もう少し大きく開けるやろ?』
「…」
『もう少し、もう少し大きく開いてみ?』
「…」
 行為の時にいつも市丸が聞かせる、なんとも言えずセクシャルな声で、もう少し開け、もう少し開けと繰り返し聞いているうちにだんだん変な気分になってきて、その声に操られるように、日番谷の膝が自然に少し開いてきた。
「…ん…」
『もう少し開き?』
「…うん…」
 実際にはそれほどは開いていないが、それでもそれだけで、気持ちが高ぶってくる。
『あんよの間に手ェ入る?』
「…う、ん」
『冬獅郎のあれは、大きくなっとる?』
「…」
『大きくし?』